2018-02 選評

カテゴリ: 月間選評

投票の結果、大賞は以下の通り
【大賞】
僕の顔 survof
【準大賞】
水温 Rixia_7oceans
思い出す詩のことなど ウエキ
名を変える鳥 カオティクルConverge!!貴音さん♪
ストロワヤ miyastorage

コメント

  • 【なかたつ氏選評結果】
    以下なかたつ氏選評
    B-REVIEW 2月投稿作品選評

  • 【百均氏選評】

    ●大賞

    miyastrage「ストロワヤ 」

    http://breview.main.jp/keijiban/index.php?id=1295

    >(煙草の煙が嫌なんじゃない

    >  状況が / 降る

    僕今度、上京するので、読んでいたら「なんで上京するんだろうな」という疑問(煙)を吸い込んだ雨が、降り注いできた。

    >煙草の煙が嫌なんじゃなくて、状況が嫌なの、分かるよ、

    >頭も痛くて、そういえば、  あの時  、 幾億の

    >  口内炎    、    改行の果てを  、   吐き下す

    >以下、燃え尽きるまで、極短い陳述

    もう、好きとか嫌いではない。分かるよ。と返すので精一杯だ

    ●優良

    岩垣弥生「電球の海 」

    http://breview.main.jp/keijiban/index.php?id=1399

    >あなたにりょうしんはいない

     いや、いるよ。でも、本当はいないんだろうな。

    ●推薦

    弓巠「あなたにたくさんの柑橘」

    http://breview.main.jp/keijiban/index.php?id=1346

    >柑橘色の言葉が欲しかったのです

    >風も水も陽の光も

    >いなくなった人たちも

    >ふくみこんだ言葉、の

    >踊り方を

    >誰か教えて と

     僕も、誰かに教えて欲しい(でも自分で身につけるしかないんだ)

     (それは髪を食べるように)(でも食べたからといってなれるわけじゃない)(僕は少女になんか永遠になれない)

     (男に生まれてしまったんだから)(でも言葉の上でなら)(女になれるね)(でも書いている内に男になってしまう)

    るるりら「おもてなし妖怪2018」

    http://breview.main.jp/keijiban/index.php?id=1336

    下手な感動を覚えるよりは、ちょっとした怖れを感じた時の方が、人を動かすように思う

    優しくて怖い、現代の妖怪

    なないろ「春、待たず」

    http://breview.main.jp/keijiban/index.php?id=1355

    なんで選んだのか自分でも分かっていない

    多分、今はもう詩を書いていない、僕の好きな詩人の面影を見たからかもしれない

    読んでいて凄く、悲しい

  • 【花緒氏選評】

    ◎大賞推挙候補

    僕の顔 Survof

    http://breview.main.jp/keijiban/index.php?id=1308

     「草食系」と呼称されるような、性愛関係に積極的になれない、昨今の若い男性の自意識のありようを描いている。作中話者は、モテる。好きな子もいる。しかし、モテようが、好きな子からどう思われようが、作中話者にとっては、行動を起こす誘因とはならないらしい。彼は、異性とのコミュニケーションに飛び込むことよりも、むしろ醜くなって、性愛関係から退却することを、無意識的に選択しているようにさえ思える。視野がボヤけ、内省的になる。視界がボヤけるから、ずっと見つめていられる、という倒錯。他者を見つめることさえ、内に視線を向けることに繋がるのに、結局のところ、内省的になるだけで、内観が始まることは一向にない。

     世界との衝突や外界との接触を通じて、自意識の変遷や人格の発露を描くことが文学であるというような考え方は最早、実効性を失っているように思う。むしろ、本作に描かれているような、世界との交れなさや、自意識の寄る辺のなさを見つめることから、作品が編み出されていくことの方にアクチュアリティがあるのではないか。

    ◎優良作品

    しらないものをさけることはできない 原口昇平

    http://breview.main.jp/keijiban/index.php?id=1351

     日本の「戦後詩」のリバイバルとして読んだ。浅学で恐縮だが、戦後詩は、詩や文学が、全体主義の台頭や国家の暴走に対してあまりにも無力であったこと、全体に資する生き方や思想が描き難くなったことへの失望が、底流に流れていると聞く。意味のある言葉を吐けないことと、意味のある言葉を諦めないこと。本作から、明確な「意味」を見出すことは難しいが、柔らかい詩文の連なりに言葉の力を感じる。

     

    トイレットペーパーの芯 蛾兆ボルカ

    http://breview.main.jp/keijiban/index.php?id=1325

     薔薇とトイレットペーパー。美しいものと、汚らしいものとの照合。その中間にある生活。それらが三位一体となって、洒脱な詩の世界に読者をいざなう。難解な言葉や華美な修飾語は一切使われておらず、誰もが意味を感得できる平易な日常語で作品が綴られている。最後には、ブローディガンから着想を得ていることまで開陳する肩の力の抜きよう。ここまで佇まいが洒脱な作品は中々、出会えるものではないように思う。

    未処理 ねむのき

    http://breview.main.jp/keijiban/index.php?id=1352

     遠くにある世界と、近くにある世界、そのどちらにも属しきることのない自己の意識。水槽の中のメダカも、アフリカの凪も、自分のものでないという意味では、等しく自己から離れている。誰のものでもない世界の中で、卑近な日常から離れて、自分の世界を見出そうとすると、いつしかナイーブな詩想にいざなわれる。兎にも角にも、言語への美的感覚を感じさせる一作であるように思った。

    ◯推薦作品

    可愛くない犬だった 夏生

    http://breview.main.jp/keijiban/index.php?id=1320

     分かりやすい「お涙頂戴」の図式の下で、多くの読み手に楽しまれ得る作品として成立しているだけではない。ペットが家族になり得ることの本質が上手くおさえられた良作だと思う。家族が、家族である根拠は、社会的価値にあるのではない。可愛いければ、血統書付きの犬であれば、家族になるというものではない。可愛くなくても、躾ができていなくても、何があろうと、互いに捨てることができないから家族なのだ。死でさえも、家族であったことを消し去ることはできない。じゃあ、またな、という詩行が示唆するとおり、人間は、犬との間でさえ、いつまでも終わらない関係を築くことができるのだ。

    ののしる  5or6

    http://breview.main.jp/keijiban/?date=201802&page=9

     狭義には現代詩かどうかさえ定かではなく、如何なるジャンルに属する作品なのか不明であるが、ジャンルに依拠する必要もないほどの分かりやすさを備えているように思う。ネット・グラフィティとでも呼称したくなるような、言葉から重層性を剥ぎ取って描かれる作品の多くが、読む、というよりは、眺める、といった鑑賞に陥りやすいがために、読む愉楽や、読むことから生じる歯ごたえが失われる嫌いがあるが、しかし本作においては、フォルムに工夫があり、<読む>プロセスが発生することに特徴がある。本作自体が、ののしる、ことを、ののしる作品であって、ののしることの連鎖から逃れられてはいないのだけれど、のっぺりした、心の重層性を剥ぎ取ったかのような平坦な文字の連なりが、ののしることの、心無さを告発しているようだ。

    左手の蒼穹 桐ヶ谷忍

    http://breview.main.jp/keijiban/index.php?id=1281

     B-REVIEWには、リリース当初から、メンヘラ詩とでも呼びたくなるような、リストカットや鬱などをテーマにした作品が数多く投稿されてきた。本作もそうした作品群の一つに位置付けることが出来るのかもしれないが、ここまで読後感が良く、確り纏まったものはこれまで無かったように思う。骨ごと断つ勢いで斬りつけた左手首に、と冒頭に開陳される精神的に病んだ状態と、あなたによって救われていくこととの落差で読ませる構造がある。しかし、本作は、落差だけに依拠したものではない。最終行で、これは数年前の話、と全体が宙吊りになることに凄みがある。病んだ状態は数年前に終わったということなのか、それとも、<あなた>は数年前に<わたし>の元を去ったのか。後者と読んでも、本作に漂う爽やかさは、強まることはあっても、減じることはない。それだけの強さを宿した作品であるように思った。

    とりあえずビール 藤一紀 

    http://breview.main.jp/keijiban/index.php?id=1396

     実存について書かれているものとして読んだのだけれど、浅学な私は、実存とは何か、と問われても、簡明にも、難解にも答える能はない。しかし、本作を通じて改めて感じたのだが、実存とはなんなのか。私たちの自意識や生には、一体何がくっついているのか。様々な書き手によって、同種のテーマを持つ作品は書かれてきたのかもしれないが、非日常的な感性の働きと、日常との距離感の取り方が絶妙であるように思った。

    ◎雑感

     当月は合計で120作の投稿を頂いた。2月は28日しかないことを考えると、1日あたりのベースでは、史上最高の投稿数である。また、3月も11日現在67作の投稿があり、投稿数が増加基調を辿っていることが伺われる。

     数より質という考え方もあるだろうが、オンライン上のプロジェクトとしての性格を持つB-REVIEWとしては、数が力を生む、もまた事実である。今後、アフィリエイトによって、工事代金を稼ぐ計画があるが、これが奏功すれば、継続的にサイトのアップデートを続けられる体制となる。活況を呈することが、アフィリエイト収入→アップデートを通じて、更なる活況に繋がるという正のフィードバック・ループ。メディアとしての自己増殖サイクルに至るまで、あと一歩という状況にある。

     力を持ちつつあるB-REVIEWにおいて、選者を務めさせて頂いていることは光栄としか言いようがない。無論、その役に見合うだけの権威や実力が、私にあるとは考えていないし、権威を標榜したいとも思わない。私が、選者である正統性は、全作に目を通しているというその一点にしかないし、それ以上のものが必要だとも考えてはいない。私は、あくまで読者目線で、良いと思った作品を推薦するのみであり、読者レビューの域を超えるものではないが、超える必要もないであろう。

     当月は作品の数もさることながら、粒の立った佳作が多く、読んでいて楽しかった。上記のリストは、私の一読者としての好みを表明したものだが、上記以外にも、広く紹介したい思いに駆られる作品が数多くあった。私が選に加えることができなかった良作は、どなたかが、選に加えていて下されば、と内心願うばかりである。

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