2017-08 選評

カテゴリ: 月間選評

天才詩人:竜野欠伸さん、今月はよく書き込まれた意欲作を2つ投じられています。しかし「ケンタウロス」のほうはどこか構成にメリハリがなく、後づけの解説も興ざめに終わっている印象で、もうひとつの「頑張る」は冗長。タイトルで提示されたテーマを十分に活かしきれていない。両方とも惜しいです。

今月の完備さんは2作とも採用したいですね。「ユニッツ」のほうは激励的に優良に上げる可能性もありかというところです。

まりも:完備さんの「ユニッツ」、激励ではなく、ガチで優良に入れてます(笑)

花緒:ようやく全作読みました。今月は作数も多いですが、推薦作相当作が異様に多いという印象で、かなり絞りにかからないと、投稿作の半分以上が推薦作相当というような事態にもなりかねません。明確に尖ったところのある作品だけを取っていくという潔さが必要なのではという気がしています。

と言いつつも、あまりまだ絞れていないのですが、私のセレクションを公開します。

◇ ◇ ◇

優良

5or6 リチウム

kaz.      黙すること

祝儀敷    裏路地

     3人の女ー固定された視界にてー

migikata   スポンジでものを洗う

なかたつ     星の誕生日

紅茶猫      夜の水遣り

前田ふむふむ  愛の名前

          黄色の足跡

bananamwllow 溝口ノート

蛾兆ボルカ    ペペロンチーノ・半熟目玉焼きのせ

Yuu_Psychedelic Adieu

推薦

湯煙  花

葛西佑也  ある雨の日、君の弟は。

徐々にでいいから 腑に落ちる

湯煙  竜の子

エイクピア  女の心

桐ヶ谷忍  メビウス または 7階のセミ

クワン・アイ・ユウ よごした海、しぶきあげた海

ともね  ポスト!

黒髪  不在

北  草花ノート

Haneda Kyou 光 音

ハアモニイベル  ファイブペニーズ

うえき  みやちゃん

survof 未来の

sonetina 拇指

いそ  好きだった人にいっそ嫌いと言ってもらいたい

りん  手作りの命

竜野欠伸  白夜の終わり

完備  candy

ミナト蛍  みゅーじっくはうす

m.tasaki   秋の花色

仲程  初夏/のと・かが

◇ ◇ ◇

花緒:作数が多い割には、絶対これ大賞作相当!というケミストリーを感じる作品は少なかったというのが正直な感想です。

まりも:祝儀さんの「3人の女」、コメント欄にも書いたのですが・・・イメージをあまりに借用しすぎている。せめて、参考画像の出典等を、投稿の段階で示しておくべき。

まりも:それから、葛西さんの作品は、感傷が強いけれども、これは優良に推したいです。

ユウさんの「アデュー」、歌詞のような叙情性と親しみやすさは好印象ですが、シチュエーションの設定やモチーフとの関わり方が、THE青春、という「型」にはまりすぎているような・・・推薦には推したいと思いますが、優良には、あと1歩、踏み込みが足りないように思います。

まりも:クワンさんの「よごした海」、海洋汚染的なイメージから入ることによって、心の海の汚染のイメージが、身体感覚で伝わってくる。言葉の呼吸というのか、リズム感にも独自のものがある。

まりも:スルボフさんとソネティラさん、強く印象に残っています。

うえきさんといそさん、あまりにも素直すぎませんか?素直に書くことは良いけれども、それゆえに切り詰めていかないと、冗漫な印象を受けると思います。

花緒:今月は数が多いので、そして今後も結構な数が投稿されることが予想されるので、総花的に、たくさんの作品を論じていくよりは、ピンポイントで、問題作というか、エッジが立った作品をしっかり論じていく方が、労力の観点からも、選評の質をあげる観点からも重要かと思っています。

なので、今回の私のリストはバランス意識しながらも、論戦が生じるように、自分の考えがビビッドに現れるような仕掛けを施してまして、早速まりもさんに突っ込んで頂いたので、議論始められるのですが。

天才詩人:明日から出張で忙しくなりますが、8月の作品は8割がた読んでいます。ぜひまりもさん花緒さん、先行して議論を始めておいてください。

天才詩人:今日読んだなかでは、北さんの「あとがき」、仲程さんの北さんにインスパイアされた作品が良かったですね。

コーリャ:はろはろ どうぞよろしくです。ささやかな一助になればいいなと思ってます。8ヶ月分いま半分くらい読み終わりました。数日の間にリストアップできればと思ってます。

花緒:ちょっと事務連絡的提案なんですが、基本的に私は全作読んでますし、メインキュレーターには全作読んで欲しいですが、最低1人、全作読んだ上で、リスト示し、そのリストベースにピンポイントで議論するという形式を採用すれば、リスト示した人間が下読みの役割を示すことになると思うので、以降のピンポイント議論は、全作読んでなくても参加可能なのではないかと思います。何が言いたいかというと、投稿作数が増える中で、全作読め!という理想論振りかざすと、結果的に、選考会議がエキサイトしなくなる可能性あると思うので。あくまで提案です。

で、今回、私のリストの中には、明らかに現代詩のそれじゃないだろっていうのを2つ混ぜました。一つはYUUさんの作品です。

花緒: 歌詞みたいですし、何というか、銀色夏生系列な感じします。一般読者にはヒットするけれど、『現代詩手帖』とかに送っても一顧だにされない作品のような気がします。ビーレビは、詩壇に参入するための予備校ではないと思うので、詩壇でも通じる作品もしっかり輩出していければと思う反面、売れ線かもしれないが、既存の権威からは認められんよという作品を推すことに意味があるのではと問題提起したいと思いました。YUUさんの作品は、一見ライトで歌詞のようですが、何か残酷な感じが伝わってくる作品でもあり、ちょっと捻った構造を感じます。優良かどうかというと議論の余地あると思いますが、推薦作以上は私はストロングポジション取りたい気持ちでいます。

まりも:YUU さんの今回の作品、今までの応援歌的な作品からは、少し異なって来ていますよね。海辺、夕陽、失恋、と、これでもか、という定番ネタを、恐れずに、文字通り正攻法で持ち込んでいる。いつのまにか、夕方から朝になっている時間の扱いに、心の流れを重ねているところは注目したいと思いました。

花緒:そうなんです。変えてきているし、歌詞のようで歌詞じゃないところは、創造的かと思いました。

なんというか、簡単に人と付き合えて、簡単に人と別れられるという、フックアップカルチャーが日本にも広がって久しい中で、ありそうでなかったところを突いているなという印象あります。

花緒:次に、いそさんの作品ですが、これも現代詩じゃないと思います。ある種のケータイ小説のような感じします。ケータイ小説は、話を面白くするために、妙に重たいネタが、軽い文体でこれでもか!と掘り込まれるスタイル多いですが、いそさんの作品は、話の面白さで引っ張っている訳ではないですよね。色々ツッコミどころ多いですし、文章に瑕疵もある作品だと思いますが、どこにでもありそうな話を、特段、共感を要求せずに、多くの人間が楽しめるレベルで纏めているところを評価しています。読者を得られそうな作品だと思っています。現代詩じゃない、クリエイティブライティング系列の作品として、こういう種類の作品も推したいというところで、推薦作にしました。

花緒:基本的に、今回、私は、これまでのビーレビ的チョイス、すなわち、技術力を感じさせるもの、読みやすく読んで面白いもの、を選択しつつ、え?それ選ぶ?という上記2作をリストに混ぜてみました。出版社の方からも注目されるようになってきている中、既存の権威からは評価されないかもしれないが、売れ線かも?というのを少し混ぜてみては、という提案です。いそさんに関してはストロングポジションはないです。ちょっと一石を投じてみたいという趣旨です。

まりも:いそさんの作品は・・・たんたんと、ライトに始まった文体が、畳みかけるように盛り上がっていく・・・その流れに勢いがあると思いますが、内容は「好きだった人にいっそ嫌いと言ってもらいたい」この題に尽きてしまう。話を聞いてくれるだけの彼に物足りなさを感じた語り手の、自己葛藤とか贖罪的感情とか、怒りや悲しみ、といった感情の強度が捉えられていない。あいまいなまま流れて行っている。推せませんでした。

花緒:そうですね、作者の力量をイマイチ感じさせない作品ではあります。素人っぽい感じが強すぎるというか。しかし、それがリアリティに繋がっているところあります。既存の文脈で一刀両断すると、取りこぼしてしまう作品だと思います。

花緒:なお、葛西さん作品ですが、私は、優良で落ち着くだろうとは思っています。よくできた作品だと思いますが、本作には事故死した少年が出てくる。私は人の生き死にをポエジーの根幹に据える作品には懐疑的です。作品として、新たな価値を生み出しているというよりは、多くの人間に備わっている感情を刺激しているだけではないかと。

まりも:ああ、花緒さんは、あの少年を死者と読んでいるのですね。私は過去の語り手自身と読んでいる。ここは、落ち着いて読み直した方が良さそうですね。

◆葛西佑也:「ある雨の日、君の弟は。」

花緒:僕がまだ長靴をはいていた頃

とあるので、当然、自分と重ねられているのは分かるのですが、下記の描写が強すぎて、私は事故死のイメージが勝ちすぎて読めてしまったと言う感じです。                           

なのに、あの日

幼い子どもの

少し汚れた黄色い長靴が

宙に舞った。

宙に舞って、地面に落ちて

あんなにたくましかった長靴は、

中までびしょ濡れになって

あの勇ましい姿は見る影もなく。

きっと

彼はなにがなんだか分からなかった

改めて読むと、確かに上手い一作ですね。誤読と言われればそれまでな気もしてきましたね。

まりも:雨を、自分達に降りかかった不幸の暗喩として描いていて(というのは、過去のビーレビ投稿作や詩集からの連想もある)その、不幸にとらえられて、もんどりうって・・・と読んでいて、具体的な交通事故等は想定外でした・・・。血みどろ系の描写もないし・・・

花緒:葛西さん作品、再読しましたが、やはり私には、かつて事故で死んでしまった子供について書いているように読めてしまいます。

<黄色い長靴が宙に舞った。きっと彼は何がなんだか分からなかった。>で事故を描き、君の弟は、と呼びかけている、その読みからもう自由に読めない感じあります。無論、葛西さんの過去作品読めば、君の弟=自分、という読みが自然に来るのかもしれないので、誤読も甚だしいのかもしれませんが。

まりも:正しい解釈なんてないと思いますよ・・・作者が主張する読み方よりも、他者の解釈や「誤読」の方が、作品の「真」に近いこともあるでしょうし・・・

だからこそ、他の方の解釈を聞いてみたいです。

まりも:無意識的に作者がとらえているものを、多数の読者が、多様な角度から光を当てていく、著者には見えない、背中や頭の後ろ、鏡に写さないと見えない顔面を、他者の読みが明らかにしてくれる・・・多様な他者の読みを期待するのは、その故なんですが。

まりも:葛西さんのは、題名から「弟」ですね

天才詩人:そうですね。花緒さんのような読みがあったとしても不思議ではない。但し、過去の自分が死んで新しい自分がいまいるというな自己刷新の物語だという、前向きなトーンは感じますね。何かに「守られている」んだと、冒頭でも書かれていますし。こう断ったうえで言うと、たしかに、誰かが自分の身代わりに死んでくれた的な、ホラー系の解釈にかんたんに転移してしまうつくりの作品ではありますね。

まりも:自分のことを書くときって、あえて距離をとったり、まったく別の話者に託して書いたりしませんか? 自己韜晦によって、事実を語ることを避けながら、そのときの心情を吐露する。そうやって、自分の中から逃さないと、苦しくなるような思い出の時は特に。

天才詩人:無意識的にそうやるということですか? 癒やしとしての戦略というか。

まりも:無意識的な抑圧もあれば、あえて意識的に、推敲の段階で話者を差し替えたり、色々、皆さん裏で工夫していると思います。

まりも:葛西作品に戻ると、題名の君、弟は、誰なんだろう、というのが、曖昧に残されていますね。幼い子供、と、彼、は、同一人物として・・・幼いこどものことを、少年と言うだろうか?だとしたら、「君」は「少年」で、その弟が「幼い子供」なのかな、とか・・・厳密に考えていくと、色々と謎が出てくる。

まりも:雨が止み始めてから傘を差すあたりも、通常とは反転されていますよね。びしょ濡れのまま、傘に守られている・・・これも不思議な感覚。だからこそ、雨は不幸や不運の喩と感じられるわけなのでしょう。

コーリャ:この葛西さんの作品はたしかに多様に読めますね。みなさんの議論を読んでまた読み直して、これはどの読みも正解のようだなあと思いました。作者の意を知ることはだいたいひとつのストーリーラインのようなものをなぞろうとすることだと思いますが、 この作品はそのラインを平行しておいてどこでも結ばないような感じを受けました。もしこれがあえてひとつの脈絡ある現実だとすると、平行宇宙のような現実なんじゃないかなと思いました。

◆B=REVIEWらしさ?

コーリャ:こんばんは。ぜんぶ読みました。いちおう僕も優良と佳作に分けてリストアップしようと思ってます。なので候補をまた再読してこようと思います。リストは明日あたりにあげられればと思います。8月かなり候補作が多かったんですが、花緒さんのとけっこう被っていたので安心しました( 笑)。

花緒:ついに再び参戦されますね。ナイスです。ちなみに大賞作候補どれですか?

コーリャ:うーん、ふむふむさんの愛の名前か、かずくんの黙するということかなあ

花緒:なるほど。確かに私の考えることと似ているかもしれませんね。

コーリャ:リストができましたんで貼ります。たたき台にしてください。

◇ ◇ ◇

優良

北:草花ノート 

田中修子:こんなに-し合ってる私と君は 

蛾兆ボルカ:ペペロンチーノ半熟目玉焼きのせ

葛西佑也:ある雨の日、君の弟は。 

fiorina:広島 

kaz.:黙するということ

なかたつ:星の誕生日

二個優:正方形の生活 

前田ふむふむ:愛の名前 

推薦

桐ケ谷忍:七階のセミ 

Migikata:スポンジでものを洗う 

湯煙:花 

5or6:リチウム 

り:マックシェイクのむ、いつも 

shun kitaoka:していく 

前田ふむふむ:黄色の足跡 

survof:未来の 

り:森羅万象、待ったなし

!? (注目作です)

kaz.:門 

塚本一期:素直な言葉 

◇ ◇ ◇

花緒:コーリャさんありがとう。もしあれでしたら、コーリャさん、全体の印象とか、リストにおいて、何か言っておきたいこととかあればよろしくお願いします。これまでの選評会議では、最初に、全体コメントとかなしで、いきなりなんとなく始まってしまっている感じあるので、最初にステートメント軽くあると、締まるんじゃないかとおもってます。

百均:すいません。様子見てピンポイントで差し込んでいきます。宜しくおねがいします。

コーリャ:最初の二ヶ月間の作品に比べてレベルが上がってる一方、作品の多様性が減りつつあるのかなと思いました。まあ最初の月がカオス過ぎただけかもしれないけど。ある種のBRスタイルが固まりつつあるのかもなと。これは良いことでもありますが、悪いことでもあると思います。

コーリャ:真剣にバリバリ読んだんですけど、それでけっこう感動するところがあったんだけど、僕のリストをみてつまんねえなと思うのは、なんかマジで文学極道のチョイスみたいというところです。それでブンゴク的って何かなんですけど、今回の作品たちで言えば描写力みたいなものかもしれない。ダーザインは描写には大変うるさかった。あの人のレスを読んでると小説のネタが本当に多いです。文学極道の最初のスタイルは純文学的で小説的だったんだと思うんですよね。

コーリャ:イメージの喚起力、ほんとに良い例は、花緒さんの落書きのやつ。たぶん字づらのリーダビリティーというのもあるんですが、論理のリーダビリティーということもあるなと思うんです。論理というのは記号の序列です。ABCと続いていく意味内容、それの繋がりを喚起しやすいように書く、そういうリーダビリティーもあると思うんです。

コーリャ:翻って花緒さんのリストはかなりコンテンポラリーラィティングな感じにまとまってる。僕もそういう良さの流れも感じました。佳作こそあんまり被ってませんが、僕もリストに入れようか迷ったものがたくさんありました。小説的な描写的なスタイルもある一方、クリエィティブに現代と共に書くみたいな風もある。そういう技術だと特にkaz.さんは頭抜けてるなと思います。あの人は文句なく現代の詩人ですね。

コーリャ:たとえばいそさんの作品の「好きだったひとにいっそ~」ですが、大変いいラィティングなんですよね。ただマジで、お話がおもしろくない。けっこう本当に甲乙つけがたいような作品が多かったんで、そういう瑕疵があるなと思った作品は厳しく見ました。

コーリャ:うまく折衷できるといいなと思います。今のところやっぱりbest3は「愛の名前」 「黙するということ」「ペペロンチーノ」かなあ 「星の誕生日」もいいですよね。fiorinaさんの「広島」もヤバイと思うんですよね。天才とまりもさん百均さんや三浦さんの意見もききたいところ。まあもしよかったら3つくらいベストを言ってくれたらかなり参考になると思います。

まりも:コーリャさんのベスト三作と、私の三作は重なってますね(連作らしいのではずしたものはありますが)・・・私は、現代詩の前衛の一派からは距離を置いていて、映像喚起力や描写力のある作品でなければ、他者には届かない・・・という立場です。ただ、イメージの漠然とした流れや(モネの晩年の睡蓮の絵みたいな、形が溶解しているような感じ)音の流れの美しさに感動する、そんな作品に出会いたいとも思っています。

まりも:クリエイティブライティングについて考えさせられたのは、私が返詩を付けた花緒作品。内的律動があり、リーダビリティーがあって、なおかつ、伝えたい、という訴求力が感じられるもの。あなたたちが言うところの、クリエイティブライティング、私が感じたそれを、もし、定義するならば・・・ということですね。通常の詩の評価軸から言えば、今あげた花緒作品は、前半部が冗漫ではありますが。もっとも、一般の文芸好き読者までを対象にしなかったら、詩の未来はないだろう・・・谷川俊太郎が言うように、いま、詩は紙の中にはなくて、ビデオや漫画の中にあるんじゃないか?という気すらしてくるのが、現状ではないかという危惧は感じているのですね。

まりも:今回は、皆さんの議論に参加する形を取りたいと思います。私のリストは、必要があれば出す、という感じで行きたいと思います。大賞の作品選定に関しても、作品そのものの質と共に、一般読者に受け入れられるかどうか、という部分も、かなり重視されていますね。ここ数か月の議論も含め、大賞作品を提示することで、ビーレビューとしての枠線を措定していく、そんな選定ラインが見えてきているような気がしています。

コーリャ:まりもさん補足ありがとうございます。全然まとまってなかったんで助かります。やっぱり僕はビーレビューが、文章というものの面白さを再発見できるような作品を生む土壌となるということです。文章という言葉のおもしろさを、ラップだとかロックの歌詞と同じくらい人を魅了してそのひとの心の一部になるような作品と出会うことを個人的に望んでいます。そういう意味合いですと、やっぱり僕はずぶずぶダーザイン派で、まりもさんもそれに賛同してくれて嬉しく思います。詩というジャンルが大衆から解離している以上、リーダビリティーというのはこれからのラィティングにマストだと思っています。

まりも:頂いている詩誌などを読む限り、現代の口語自由詩は、むしろ「読んでわかる」作品が主流です。そこにいかに新鮮さを吹き込むか?いかに感動のある作品に持っていくか?いかに面白みを加味していくか?が問題とされるべきだろうと考えています。もちろん、前衛的な実験を試みている人達もいて、そこに変化や進展もあるのですが。オーソドックスな手法の範囲内で、いかに自己更新していくか、ということに取り組んでいる人達も、もちろんいるわけです。

コーリャ:なるほどそうだったんですね。それでは問題は、その分かりやすい詩がなぜ大衆に訴えかける力がないか、その辺りも含めて考えていかなければいけないかもしれません。マーケティングの問題でもあるでしょうし。いま花緒さんが精力的にそちらの活動をしてらっしゃいますが、恐らくそれもマストなオリエンテーションで、一朝一夕にはできないことだとおもいます。いずれにせよ確かなところは、力のある作品がまずファンダメンタルとしてあるべきであり、それをどうやって定礎するかが大事だろうなと思います。それの作業はキュレーションに他なりませんが、つまりそれは真剣に読んで真剣にみんなに伝える、そんなシンプルなことなんではないかと。だから関わるひとびとそれぞれが同じ方向を向かなくたっていいと思います。むしろ同じ方向を向きすぎることはクリティカルなことでもあると思うんです。ある程度のグランドピクチャアは共有しつつ、 それぞれの領分をもって、良い文章を良いと選ぶ、あるいはそれに寄与することをする、 そういう地道で当たり前のことが、なるべく多様性を担保しつつできればいいなあと思いました。

花緒:コーリャさんの言う多様性の話同意します。キュレーター全員が意見の一致をみる必要はない。全員が何となく安心して推せるものを選ぶよりは、それぞれがしっかりとポジションを取って推したくなるものを見出していくことが重要だと思います。いいと思うものを推すという原点を忘れたくないですよね。

天才詩人:遅くなりました。リストを送ります。

◇ ◇ ◇

優良

桐ヶ谷忍:「メビウス」

Migikata:夢の中で何度も繰り返しながらその都度忘れてしまう「僕」の体験

クヮン・アイ・ユウ:よごした海、しぶきあげて海

祝儀敷:裏路地

葛西佑也:ある雨の日、君の弟は。

5or6:リチウム

fiorina:広島  ~るるりらさんへの返信 2010頃初稿~

fiorina:<演劇「王女メディア」>

HAneda kyou:光 音

北:草花ノート あとがき

白島真:「おくわ」伝説

bananamwllow:溝口ノート(一)

完備:units

東川原来夏:小夜瑠璃物語

前田ふむふむ:黄色の足跡

前田ふむふむ:愛の名前

推薦

エイクピア:ドアノブ

kaz.:門

kaz.:黙すること

桐ヶ谷忍:「七階のセミ」

塚本一期:素直な言葉

Migikata:スポンジでものを洗う

徐々にでいいから:腑に落ちる

祝儀敷:三人の女―固定された視界にて―

二個優:正方形の生活

ともね:ポスト!

田中恭平:ローリン、ローリン

なかたつ:星の誕生日

なかたつ:青の断章

り:マックシェイク飲む、いつも。

り:森羅万象、待ったなし

湯煙:花

弓巠:ここには

北:草花ノート

HAneda kyou:声を出せ

仲程:初夏/のと・かが

静かな視界:夏の横断歩道

静かな視界:最後の宴

蛾兆ボルカ:ペペロンチーノ・半熟目玉焼きのせ

蛾兆ボルカ:獣の変身

宣井 龍人:老犬

完備:candy

田中修子:こんなに-し合っている私と君は

水星:帰ってくればよかったのに

水星:変調

小笠潔:私が鈴虫だったころ

ハァモニィベル:ファイブ・ペニーズ

渚鳥 s:神話の果て

岩熊享:高架下

いそ:好きだった人にいっそ嫌いと言ってもらいたい

survof:未来の

◇ ◇ ◇

百均:おはようございます。僕も8月分読み終わりました。溝口ノートは途中まで面白く「これは! 」と思っていたのですが・・・続きが読みたいですね。

百均:前田さんの二作品は詩行のテンポが非常にゆっくりで独特、そこからホラーを感じました。緊張感を常に孕む叙述並びに文体。それらに謎を託しながらテンションを上げていって裏切ったり、意味を差し込んで見たりする所に構成の旨さもかんじます。久しぶりに詩を読んで怖い気持ちになりました。まさにジャパニーズホラーですね。面白いっていうよりは参考になる作品でした。

百均:蛾兆さんはペペロンチーノの落ちが大変よく。プリンがまぁ、とにかく素晴らしいですね。今月一番よかった落ちだと思います。今月は落ちが投げ出されている作品も多かったように思うので、その分面白くかんじたのかもしれません。

百均:エイクピア「ドアノブ」、kaz.「黙すること」短い作品の中でキッチリ仕事してるのは二作品かなぁというかんじです。素材感が強く、大賞かどうかといわれると、怪しいですが、やってることはセンスの塊な気もします。音で意味のニュアンスをズラしながら、直喩よりもより近い意味を引き出す表現の力。ナンセンスな方向である種今まで書いてこられた二人が、より今月は意味に一番近いところにいるようなきもする。というかんじがします。

まりも:時々、ジャパニーズホラーという言い方を耳にするのですが、それは、たとえば欧米のホラーと、どんな風に違うのでしょう・・・

百均:ホラーについては、なんとなくイメージでそういっちゃったのですが、 「浦沢直樹の漫勉」の伊藤潤二回を見ていた時に、浦沢直樹が「俺、ホラーかけないわぁ」って最初言ってたんですけど、伊藤のペンスピードを見た時にめちゃくちゃゆっくり書いてる所に着目していて、そこにホラーが宿るんだなぁ、俺とは違うという事を言ってたんですね。前田さんの詩行を見ると、なんというか怖さのベクトルがローギアな所にあるように思います。動的なものではなく、静的なもの、ギリギリの綱渡りをしながらゆっくり扉を開けていく感じ。人形が扉の隙間からこっちをみているような感じ。そういうものが近づいてきたり、自分から近づいていくかんじですかね。西洋についてあんまりわかってないのですが、あの場合は襲ってくるイメージ、つまり驚きみたいなものかなぁと思います。

まりも:日本のお化け屋敷は、実体感の薄い、気配みたいなものが襲ってくる怖さがあるけれど、欧米のゾンビや化け物は、頑強な物質性を持っている感じがしていて・・・心理的にじわじわ来る怖さと、肉体に暴力的に関わってくる怖さの差かなと思っていたのだけれど、前田さんの描いている「怖さ」には、その両者を感じた、ということですね。

天才詩人:妖怪やお化け屋敷など仕掛けや小道具を重視した、東アジアの御霊信仰と地続きをなす、「気配」の扱い方とか。

まりも:ホラーというと、(私は)欧米のホラーを連想するので、ジャパニーズ、という形容がついた方が、より実感に近いのかもしれませんね

天才詩人:ジャパニーズホラーという言い方は、ま〜逆輸入ゆえですよね。「リング」なんかが世界的な大ヒットになったし。逆輸入ゆえカタカナで「ジャパニーズ・ホラー」

百均:なるほどなぁ、面白いっすね。前田さんの作品は個人的にびーれびの中には今までなかった方向性だとはおもってますね。

◆5or6:リチウム、蛾兆ボルカ:ペペロンチーノ・半熟目玉焼きのせ

天才詩人:今月、良い作品はたくさんあるんですが、とくに5or6さん「リチウム」が印象に残っています。大賞に推したいです。テイストとして2月の大賞作であるフジサキさんの「いちごシロップ」に近い。軽量感がアピール点ではないでしょうか。

まりも:リチウム、良かったですね。若干、最後のコーダの部分が、感情過多になっている印象もありますが・・・最後に粉砂糖をかけました、という甘さ。それもまた、詩の後味の心地よさですが

百均:リチウムは僕は今までの5or6さんの作品の中ではダントツに一番かなぁ。

天才詩人: 蛾兆ボルカさんの「ペペロンチーノ」は、最後の着地は決まっています。問題は、「流動」性や「結晶」性というテーマを追究する道筋をわずかでも示唆できているか。ここですね。

まりも:終わり方が、若干予定調和的、という印象は否めないですね。日常へ帰還するルーティンのように感じられる、ということなのではないかと思いますが、どうでしょう。もっとも、ボルカ作品の持つ、意外性のある展開や、新鮮な視点、非日常の部分で思考実験や思考体験を経た後、それはそれ、という感じで日常へ戻ってくる。その安心感を、どうとらえるか?という・・・その点に関しては、いかがですか。

天才詩人:着眼点はそこまで新しいと思わないですね。もう一作の、「ナメクジ」にしても。しかしボルカさんの強みは筆運びがたしなのと構成が堅牢である点。その意味で「詩」作の模範たる部分は評価されるべきかもしれません。そのいっぽうで「クリエイティブ」さはそれほど感じません。コンセプトとしては夏生さんの「日常の雑記」的な方向をめざしているようなイメージです。

まりも:天才詩人さんのおっしゃる「クリエイティブ」は、創造性や進取の気性に富んだ・・・というニュアンスですか?

天才詩人:ひとことで言うのはむずかしいですね。わたしの「クリエイティブ」さに関する判断はまたべつの機会にお話したいです。

百均:プリンはプルプルしているけどちゃんと固まっているので、流動性もあるし、ある程度結晶しているともいえる。という意味でナイスな感じがします。冷蔵庫で冷やす過程も、頭冷やしたりちょっと客観視したりに近くていいような気もします。ペペロンチーノは、後で書きますがそこそこ深いけど読みやすいのかなぁとか思います。ナメクジは、僕もそこまで推せません。

天才詩人:個人的に、百均さんの解釈はちょっと知的にすぎるかなあと思います。プリンがメタファーとしてちゃんと役目を果たしているかと問われれば、わたし的には否なんです。むしろ面白いのは、食卓から冷蔵庫の中へ視点=カメラをシフトさせる技法ですね。冷蔵庫の中ってある意味日常のなかの異世界で、異質な時間が流れているイメージがある。だから締め方として、つまり、これまでの語りを終止させる方法として有効かつ、上手だと思います。

コーリャ:ペペロンチーノ、ぼくは最高だと思ってます(笑)。 なんか家庭的でいいじゃないすか!キッズが賢しいのもいい感じ。 プリンが流動的で結晶的なものでもあるという百均さんの読みもなかなかかっこいいけれど、プリンは家庭の象徴みたいにぼくは読んで、それで満足しました。

コーリャ:反対にリチウムはたしかにハンサムなラィティングなんだけれど、なんだろう、311系の、特に原発に関するテーマってすごく取り扱いが難しいように感じます。あれは成功してるのか。また再読してみます。そしてこれまた天才詩人とバトルになる予感です( 笑)。

花緒:リチウム面白いですよね。でもコーリャさんが、選外とするのも分からないではないです。最近の5or6さんの作品は文章の手触りが、いわゆる現代詩のそれではなくなっています。言葉に重層性を持たせるのではなく、言葉から重層性を剥ぎ取ってペラペラにしていくような手法が用いられているように思います。本作、リチウム、というワードには象徴性ありますが、それ以外の詩文は、あえて表層に徹しているともいえる。であるがゆえに、リフレインが音楽的でうまく効いていると思います。が、手法が現代詩のそれではないので、詩壇の人からは無視されそうな一作だとも思います。

花緒:なんというか、エレクトロニカヒップホップみたいな現代的な叙情性を感じる作品でしたね。テーマが取り扱いにくい作品というよりは、ライティング手法が取り扱いにくい作品なのではないでしょうか。その意味で、賛否両論あって当然の作品でしょう。

まりも:リチウムは、花緒さんの読み方に近いですね。言葉の重層性というのは、言葉に多義的な意味をもたせるということであると同時に、わざとぼやかして、いかにも「詩」だな、というスタイルを作る、そんな「わざとらしさ」を生む弊害もあって・・・そうした、パッと見た感じ、「詩」としての重厚さを備えていますよね、というスタイルを付与していく方向から、むしろ引き剥がそうとしている、そんなベクトルも感じますね。

天才詩人:そこらへんの話、あまりわからないんですよ。実は。

まりも:意味と抒情性を限りなく近づけて一体化させて、感性で歌う。歌謡曲に似た音楽性が、一般読者にも開かれたものとなる。他方で、原発事故という重い意味を暗示しているのか、偶然の一致なのか、リチウム電池やアンドロイドのイメージなのか、そうした、意味を厳密に社会批判的に問うという方向からは逃れようとしているようにも見える。

天才詩人:たしかにリチウムはライトな作品ですよね。でもそれを言うのならば(過去に大賞を獲った)りさん「シャンゼリゼ」なんかもそうだし、藤崎さんのもそうなります。もういちど読みますね。

天才詩人:「リチウム」は、詩投稿サイト「文学極道」の初代代表だったダーザイン(武田聡人)が読んだら絶賛する作品だと思います。いいなと思うのは作品世界にシークエンスがあること。デートしているカップルが、コスモスの丘とかいろいろ見ながら歩いていくわけです。はっきりと自覚はできないんですが、過去でも未来でもない、否応なく終末に向かっていく(ひとはかならず死ぬ)世界のフラジャイルな感じがよく表現できている。

ここでロックフェスが毎年行われるの

卵のオブジェが無数に置かれた森を眺めて

あなたは言った

天才詩人:このフレーズ。毎年ロックフェスで人がたくさん来るけど、今は誰もいない。不在というか、異なる時制へのリファレンスというのでしょうか。文章のスタイルとしては軽量ですが、つくりは割と丁寧だと思われます。

僕は一面に咲いたコスモスの中で

鳴り響くギターに合わせて

あなたが踊る姿を想像しながら

同じように森を眺めた

天才詩人:今ひとつ響かないのは最後のリフレインでしょうか。あとひとインパクト欲しかった。

図書館で働こうかしら

と小声で呟いた

どうして?

と尋ねると

知らないことが多すぎるから

天才詩人:ここも読者を引き込みますね。「知らないことが多い」という謎かけのような手法で。ところで、リチウムは乾電池の構成物質のようですが、多くの人にとってポップで曖昧な語感があり、かつ化学元素であるという、微妙でキャッチーな言葉を持ってきたなーと。リチウムという言葉を置くことで、冒頭の原子力発電所のインパクトや重圧が軽減=中和され、ありがちな反原発詩に陥っていない。

リチウム=乾電池という軽量で小さな、ちっぽけな存在と重厚長大な産業機構としての原子力発電所。大きな世界と小さな世界との対比。海岸、コスモスの丘、オブジェの置かれた森、それを読者は追体験するわけですが、それが身体を伴う追体験なのか、それともリチウムを内臓する電子アイテムのHDモニターで「観る」次元のそれなのか、そのへんの重層性も突きつけてきます。

天才詩人:電子回路化した時代。アクチュアルな見方をきれいに切り取っている。時代はやっぱりリチウムという言葉にこめられた「携帯」的なもので操作したり創作できる何か。そこだと思うんですね

※ 原子炉の制御棒にも使われています。。。

天才詩人:でもメインはやっぱりリチウムイオン電池みたいですよ。ブルーハーツみたいな「プルトニウム」はもう要らない、ではなく「リチウム」が要らない、ですからね。良いと思います。

花緒:スタイルとしては薄いですが、つくりは割と丁寧であり、かつ描かれている内容はアクチュアルである、という意味ですよね。同意します。優良以上はおっしゃる通りと思います。

◆白島真 「おくわ」伝説

天才詩人:今月はほかにも「レベルの高い」作品はあるのですが、「リチウム」を超える印象はなかったです。白島さんの「おくわ」伝説の渋さ。bananaさんの「溝口ノート」の洗練された筆致。それから宣井さん「老犬」がデッサンのようで詩作品として新しく感じました。

まりも:同意。白島さんのおくわ伝説も宣井さんの老犬も、いわゆるオーソドックスな詩作の王道をいくというのか・・・口語詩100年の歴史の中で、これが口語詩だ、として、何となく形作られてきたスタンダードを、まさに体現する作品だと思います。まだ、私のリストを挙げていませんが、おくわは推しています。

天才詩人:白島さんの「おくわ」伝説。渋く引き締まった文体で大人にしか書けない一品という趣きがあります。

コーリャ:白鳥さんの作品再読しました。コメントも読んでなんとなく分かってきました。最初に読んだときより読めたと思います。綺麗な筆致ですよね。土着性の名残を現代の日本にオーバーラップさせる。

まりも:「おくわ」伝説、正攻法ですよね。新奇な技法とか表現の意外性といった部分での読者の驚きは、意図していないようにも見えます。クラシック音楽でいえばベートーベンのような(笑)

まりも:安定した文体、破綻の無い文体とも言えますが、オーソドックスなスタイルをおろそかにしない、ということも、新しい表現を探るためには重要だと思っています。ジャズで、逸脱と回帰、というようなことが言われますが・・・その枠組みを自分の中に持たないまま、新奇な表現ばかりを模索していくと、表現そのものが拡散していってしまって、自分の文体を作れなくなると思いますね。

◆なかたつ:星の誕生日

天才詩人:なかたつさん「星の誕生日」。秀作ですがいまひとつ手放しで評価できない部分もあります。とくに前月の「縁」とくらべると引っかかってしまうんです。なかたつさんは個人的な随想を、自分の言葉を中心に据え深めていくことで、もっと作品が良くなるんじゃないかという気がします。「体を売る」だとか、お金の取引だとか教訓的な言葉が散りばめられていて、作者本人の「生」の実感をストレートに綴る言葉とのあいだにコンフリクトがある。要はコンセプトとか社会通念に吸収される言い回しを避ける(減らす)ことでこの作品はもっと良くなるはずだ。

天才詩人:ここになかたつ作品を考える鍵があるような気がするんです。

天才詩人:なぜ前月の「縁」がキュレーターほぼ全員を躊躇なく感動させ、ほかの多くの作品が次点どまりになっているのか。考えてみる価値はあるはずです。

コーリャ:星の誕生日も優良でもいいと思いますね。こういう相対的な評価というのはどうかと戸惑いますが正直に他のひとの作品のクオリティーにそこまで劣ってるとは思いません。お金だとか教訓の部分はひとが社会で生きていくうえでの状況のことで、この作品の書き方はなんとなく私小説風であり、エッセイ風でもありますが ジャーナリズムみたいなものを感じました。それが本人の実存のありかだとすればそこまでコンフリクトでもないように感じます。

まりも:なかたつさんの「縁」は、自分でも把握しきれていないことを、そのままに提示して、再度、眺めてみる、という視点があったと思うのですが・・・今回の作品は、ロートレック的な視点というのか・・・職業に貴賤はない、という、タテマエであり、理想でもあることがらと、実際には痛苦や悲しみを覚えてしまう情況への、なかたつさんの真情がまっすぐに出ているような気がします。ちゃりーん、という音が、詩の空間に無機質に響く悲しさを、ある種の感傷と受け止めるのか・・・同情に堕し過ぎない、透徹した視線と読むのか、という部分で、評価が分かれるのではないか。

まりも:若干、感傷に踏み込んでいる印象はありますが・・・その分、作者の持つ人間的なやさしさとか、同情に傾いていく心情をあえてセーブする誠実さのようなものも、わりあいにストレートに出ているようにも思います。

まりも:詩の立ち上げる空間に、謎を残している前作の場合、読み手がその中に入り込んで、自由に探索する、そんな「読み方の自由」を味わうという、文学作品を読む楽しみがあったのではないか、という気がします。

まりも:「星の誕生日」は、作者の想いを伝える、手紙のような性格が強く出ている印象があります。他者が作品の中に入り込む余地を残している、というよりも、作品の方から、読者の側に訴えて来る、しみ出してくる部分の方が強い。文学的な芸術性とはなんぞや、と言い出すと、それこそ収拾がつかなくなりそうですが・・・大賞作品には、読者にとって、読みの多様性を残す、その余地を残す、多義性を持った作品を提示すべきではないのか・・・という思いはありますね。「リチウム」読んでいて非常に心地よかったし、多くの人に愛される作品だとも思うので・・・一般読者に、より開かれた作品を提示していくべきだ、という観点に立つなら(天才詩人さんが、その観点から選んでいるのかどうか、ということは別にして)、「リチウム」を大賞に推してもよいのではないか?という、天才詩人さんのセレクトも納得するのですが・・・読み手に対して、恋愛ストーリーに加えて、社会批判や文明批判といった多義的な読み方をゆるす余地を残した作品であるかどうか。読んだ時の後味の心地よさ、そちらに焦点が当てられているように感じます。

天才詩人:公正な目で評価すれば「星の誕生日」は優良で受理でしょう。何度か読みかえしたのですが、やはり「体を売る」人という、十把一絡げ的な表現がひっかかるんですね。ほかの部分が良いだけに残念だなあと。実際に体を売って生活する本人らから見たら、けっきょく向こう側から見られているという。 共感はされないでしょう。育ちの良い青年が書いた勝手なロマンティシズムという一面があり、読者を選ぶ作品ではありますね。

まりも:そうですね・・・ロートレックほど、彼女達の世界に入り込んではいない・・・天才詩人さんがおっしゃるように、外から見ている視点とか、幻想を被せている、という印象が拭えないですね

百均:うーん、そうですね…星の誕生日については、僕はなかたつさんの作品の中で、一番好きっちゃ好きだとおもってはいます。ただ、皆さんの感想もわかります。

今日もどこかで体を売る人がいて、それを買う人がいる。

(お前は、二人目だったから、とにかく痛かった)

体がより売られるように努力をする人がいる。

(それは夏のとても暑い日だった)

そして、子が産めるように努力をしながら詩を書く人がいる。

(買ってきたよ、おめでとう、ありがとう)

その詩が読みたくて仙台に行く人がいる。

(お前はお兄ちゃんに大切に育てられたんだよ)

そんな詩がネットの海で眠らないように思い出す人がいる。

(そういえば、この間、あいつがお前のこと心配してたよ)

「お父さん、お母さん、ありがとう、お兄さんもね」

(誰もが誰かの子である、とあなたはブログで、誰かの小説のフレーズとして紹介していましたね、この言葉がずっとこれからも忘れられません

百均:個人的に、今月の作品で一番琴線に触れたっていう所ですと、僕はここになります。体を売るっていう所は、確かに、まぁちょっとリスキーな表現だと思います。単純に「子供を産む」っていう所と「体を売る」っていう所、あるいは「自分の体が売れるように磨く」と、「生まれた子供をちゃんと育てる」とかそこに纏わる「「体」という金銭的な価値」、「あるいは子供というお星様みたいな金じゃない価値」で、その間を繋ぐ「詩」なるもの、それを仙台まで追いかける「語り手」とそこまでの行為を僕にさせる「詩の書き手」みたいな所とか、色々な感慨が押し寄せてきれいに上手く重なり合っている。満点とまでは言いませんが、きれいなお星様みたいな情感が天球儀の上に刻印され、星座が結ばれそうで結ばれないような感じが、割と絶妙だとも思います。僕は割とこの詩で、結構じーんときましたよね。個人的には上に引用した所に色々な物が上手く凝縮。。。はしてないけど、なんか上手い感じに豊穣な感じがします。今までの大賞とかそういうのを除くと、今月の百均賞っちゃいそうですかね…

それで幸せが得られるのであるならば、どのような労働であろうと文句を言われる筋合いはないから

百均:一応ここで回避しようとしている部分はあるのかなぁとは思うんですけどね、でも言えばいいっていうもんでもないのが難しい所だとは思います。

百均:リチウムの場合は、そういうところの回避が僕は上手いなと思います。政治的な、あるいは経済的な、あるいは学問的な要素について、考え出すときりがない。僕たちは、リチウムを使わずに生きる事が多分殆どできないでしょう。原発反対と叫んだところで僕たちは電気を使う。リチウムを内蔵したスマフォを使う。という所から攻めていくと、リチウムをやめる事は出来ない。実態的な「意味」を持つリチウムを捨てる事、やめることはできない。でも、この詩のやめようには説得力があるというのは、アクチュアルな部分での言及ではなく心根の部分に焦点をずらす事でやめることの意味を新たに抽出している所にあると思います。プルトニウムではなくリチウムとずらし、図書館から出ていって色々な所をめぐりながらリチウムをやめようというそこで示された意味はほぼ理由なき意味に近い。5or6さんの作品は結構アッパー系な物が多かったと思うのですが、今回はダウナー系で、こういう風に角の取れた諦め方をしながら作品内に提示したテーマに向き合っていくこと、最終的に人そのものに向かっていく語り方には非常によい好感をもちます。

百均:リチウムでもなんでもいいんですが、地震のことについて書かれた詩は僕はあんまり好きではないんです。大体それらは怒りや悲しみに溢れていますし、あるいは救いようのない怨念によって塗れているのが殆どだからです。でも5or6さんは色々な物に纏わる激しい文脈、考慮せねばなるまい、というような文脈そのものの意味を本作ではリセットすることに、僕は成功していると思ってしまいました。意味を無くしていく薄い方向に持っていくという、花緒さんの読み筋は、僕はそういう意味で最もだと思います。んで、今までの5or6さんの作品のやり方よりも、僕は今回のやり方が本当に気に入りました。多分色々考えねばならないことや策は沢山ある。本当にリチウムをやめることなんかできないかもしれない。でも、リチウムをやめよう。と真っ向から叩きつけよう、という方向でもありながら、その語り口はどこまでもやさしいという所、、、まぁ個人的には悟っちゃってる感じがします。しかもそれが滑ってない感じっすかね。

まりも:百均さん、ありがとうございます。なかたつさんの作品、「優良」クラスではある、と思っていますが・・・。

百均:まりもさん、了解しました。まぁあれですね、、、ここまで書いたのは、建設的な優良にしたいなぁ~程度の感じです。正直、大賞作かどうかという所では、今月は全投稿作含めて考えても、ピンと来る所もあるけど、しっくりこない所もあるのかなぁ、みたいな感じではあります。

百均:どの作品にも欠点があり、その部分は恐らく「読まれにくい」みたいな所に対する比重、あるいはそこに選択された言葉が悪い方向に作用してしまう「極端さ」を持っている事と思いますが。。。それはいいところを加味するなり認めるなりしていく方向に議論が転がっていくのか、あるいは欠点の多さを差し引いて選定作品を削っていく方向に向かうのか、みたいなところで、どっちで作品を落としてくあるいは拾い上げていくのかというのが今月は難しいような気もします。

まりも:皆さんの評価をまとめた8月の仮得点表を作りました。メールで送りました。私の評価は、まだ入れていません。

花緒: うまい貼り方わからなかったので、とりあえず、シェアできるグーグルファイル作ってみました。


まりも:推薦で○をつけているのは、桐ケ谷さんのメビウス、クワンさんのよごした海、湯煙さんの、花、スルボフさんの未来の、二個優さんの正方形の生活、東川原さんの小夜瑠璃物語・・・これは、短歌の連作のような手法とイメージの豊かさが印象に残りましたね・・・紅茶猫さんの夜の水やり、フィオリーナさんの王女メディア、りさんの森羅万象、水星さんの変種、これは、音の流れの美しさが印象に残っています。あと、なかたつさんの青の断章

天才詩人:クアンさんの「よごした海」はボーダーのようですが、わたしは強めに推薦します。

まりも:クワンさんの方ですが

〈言葉で触れられず〉現実とか言葉、といった抽象語がストレートに出て来る、そこがわかりやすくていいな、という思いと、〈海〉が現実の海のイメージと心中の海(自分を取り巻く世界の比喩)の二重構造になっている、ということを、もっと先になって明かしてもよかったかもしれない、という思いの、双方があります。読者に、途中まで「海の汚染」の話だ、と思い込ませておいて、途中から、あれ?と気づかせる、先へと引っ張って行って、後半で「なるほど!」と明かしていく、ようなやり方

私のコメントの中から引用。ここで引っ掛かった、というのは、もっと書ける作者では?という、欲張りな願望があるから、かもしれない。最初に伏線として置かれた比喩としての「宝石」を、最後に、確たるものとして入手する展開も良かった。優良に推し直します。

まりも:私の点数表は出さないでおこうと思ったのですが、やっぱり加えた方がいいですか?もっとも、右肩さんのスポンジと夢の中で、を入れ換えたくらいで、上位の順番は動かないと思いますが。

天才詩人:お任せします。

まりも:仮評価表を見ていて、3点以上が21、大賞を除いたとして20、数としては(若干多いですが)妥当であるような気がします。まず、優良作品から、なのですが。リストの三点以下のところで言うと、(私の選では)徐々にさんの腑に落ちる、完備さんのユニッツ、右肩さんの夢の中で、白島さんのおくわ伝説を、優良に入れていて、ほぼ、天才詩人さんと、重なっています。

花緒:優良の数20は正直多すぎるので、絞る方向で議論すべきと思いますがどうでしょう。

花緒:今回、私からの提案なのですが、優良だけしっかり議論して、優良に関わる議論に名前は出たが、優良には及ばずというものを推薦作にして、で、残りは各キュレーターが各々いいと思うものを2−3作持ち寄って、(議論なしで、それぞれの推薦理由だけ書いて)それをキュレーター推薦作としませんか?それこそが、本来の意味でのキュレーター推薦作だと思うのです。ここまで、今回コーリャさん参戦の効果もあり、かなり密度の濃い議論になっていると思うので、この密度続いて欲しい気がします。総花的に議論する必要はないと思います。あくまで提案です。残り時間との兼ね合いだとも思います。

コーリャ:花緒さんのサジェスションに賛成です。

まりも:そうですね・・・順番に見て行きましょうか。完備さんのユニッツ、こちらに関してはいかがですか。

天才詩人:Kazさんのは短詩だし、わたし的にそこまで評価できないです。Kazさんよりは完備さんのユニッツを推したいですね。candyも良作だと思う。

まりも:完備さんのユニッツ、あれも広がりがあって素晴らしかったですね。優良で良いと思います。

花緒:私はキャンディの方が完備さんの良さが出ている印象を受けています。ユニッツちょっと、理屈っぽさが先に立っているような気はしているのです。

まりも:言葉遊び的な軽さも含めて、ですか?

花緒:ユニッツは、そんな印象を受けました。

まりも:ユニッツは、複数の世界が共存しているような、平行宇宙的な世界観を感じて面白いと思いました。優良に推したい。

花緒:なかたつさん作品、優良は私も賛成です。天才詩人の指摘にもありましたが、体を売る人、という売春に対す

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