2017-07 選評

カテゴリ: 月間選評

天才詩人:ジョバンニさん、なかなかの快挙ですね。

まりも: 徐々にでいいから さんも、深まってきましたね。

天才詩人:今月は文章はよく書けているんですが内容がいまひとつという作品にけっこう出会いました。

天才詩人:静かな視界さん「真実」、文章も上手で内容も頑張って書かれている。でも石は考えるだとか鳥は空を飛ぶとか、クリシェな感じが否めない。むしろ、もう一作の「コロニー」のほうが試みとして面白い。

まりも:静かな視界さん、私は「コロニー」を推薦に採りました。「真実」の方は、前半三連でいったんまとめた方が伝達性が強まったと思います。コロニーは、ひとつのイメージとテーマを粘り強く展開している。映像喚起力の強さで推します

まりも:選考に関して、なんですが、可読性、この考え方を重視してもいいように思うんですが、どうでしょう。以前、花緒さんの右肩作品の評にもありましたね、読む愉楽、という考え方。

難解な作品を読みといたり、独自の読みに誘われたりする喜びは、むろんありますが・・・マニアックな喜びでもある。その面白さを、真に感じている人が、その面白さを力説することで、今まで読めない、わからない、つまらない、と思っていた読者が、新しい面白さに気づくこともある。

逆に言えば、真に面白さを感じていないけれど、詩史に照らして見たとき、新たな試みを行っている、だから評価すべき、しておくべき、というような評価のあり方からは・・・クリエイティブライティングは、自由であっても良いのではないか。

まりも:言葉の面白さや、イメージの斬新さを追求した結果、史的に見て新しい成果を打ち出している、という作品を読みたい。史的な新しさを追求するぞ、というところから始まって、結果的に面白い作品が出来た、ということもあるかもしれないけれど・・・

感動するか、感性にダイレクトに響いてくるか、思想的に深い次元に誘ってくれるか、言葉の豊かさや面白さを探求しているか・・・他にも色々な、面白さの観点がある、とは思いますが・・・

上記は、新しいかどうか、ということを考えるときの問題提起で、旧来のオーソドックスな書き方であっても、普遍的な感情に訴えてくる、という作品の評価には、当てはまらないこと、かもしれませんが・・・。そうしたことも含めて、考えていけたらと思います。

天才詩人:たたき台として、優良、推薦案をリストアップします。

* * *

●優良

ユーカラ : 『巡礼』

なかたつ : 縁

HAneda kyou :フィラデルフィアの夜に

角田 寿星: キリエル人(きりえるびと・ウルトラマンティガ)

完備 :coarser

るるりら :△

田中ジョバンニ :白を信じて染みが付く

祝儀敷 :卒塔婆を背負いて山をゆく

祝儀敷 :氷の女王

白島真 :詩論 ルドンの眼

fiorina :ダグマ Ⅲ

bananamwllow :死者の眼は優しさを帯びない―黒田喜夫の初期作品について

●キュレーション推薦

kaz. : 姆大陆――記憶のムー大陸――

桐ヶ谷忍 :「花の死体」

桐ヶ谷忍 :「ゆりかごを捨てに」

Migikata :飛込み

泥棒 : 変なプレイ

徐々にでいいから: 根っこから

り :あなたを待つよ、シャンゼリゼ

湯煙 :ある猫

湯煙: ニュー詩ングル 『長渕剛 -2017 文月-』

5or6: ポエケットは明日両国でやるってよ。と書いたが、なんにも響かなかった。

弓巠 :水のおぼえ

北:タビラコと仏の座のロゼット

霜田明: 怠惰

紅茶猫:心中に予告、心中に遅刻

紅茶猫:無題

あきら :なさけない人

夏生 :メッセージ

仲程: ミシガン・レリックス

仲程: 向日葵と向日葵娘のこと

静かな視界:コロニー

蛾兆ボルカ :考察と「苺」

蛾兆ボルカ :パップリポンから来た少女

bananamwllow :INTERNATIONAL HIT MAN BLUES

なかたつ:Cocco/少女、の祈り

エイクピア:カイコ~東にあるイタリア~

田中修仔:小さな夜の羽虫は遺書

YUU PSYCHEDELIC: 通学路

Kikunae: きれいな爪をしているから~

およそ紺にて :フラペチーノ、産まれる

白島真:扉

* * *

まりも:優良候補の数は同じ12で、内訳がちょっと違う(笑)

花緒:大体あっているけれど、微妙に違いますね、私とも。

まりも:優良で一致しているのは、以下の7作品です。

= = =

ユーカラ:巡礼

なかたつ:縁

るるりら:△

ジョバンニ: 白を信じて染みが付く

祝儀:卒塔婆

白島:詩論 ルドンの眼

バナナ:黒田喜夫

まりも:これは、優良か推薦か迷ったもの

羽田:フィラデルフィア

フィオリーナ:ダグマⅢ

角田:角田 寿星 キリエル人(きりえるびと・ウルトラマンティガ)

= = =

まりも:祝儀さん「氷の女王」、作品として、卒塔婆の方がずっといいし、二作優良に入れるのか?という観点から、推薦でも良いかなと。

まりも:他に、私が優良に入れているのは

= = =

紅茶猫:心中に予告、心中に遅刻

あきら:なさけない人

仲程:向日葵

ボルカ:考察と苺

桐ヶ谷:「ゆりかごを捨てに」

= = =

花緒:一応、ノートに書いている案を。

+ + +

●大賞案

なかたつ 縁

●優良案

フィオリナ:ダグマ3

ジョヴァンニ:白を信じて染みが付く

泥棒:変なプレイ

祝儀敷:卒塔婆

紅茶猫:心中

夏生:口笛

田中修子:夢夜、四 獣の影と永遠の放課後の廊下

白島:扉

白島:詩論 ルドンの眼

bananamwllow: 詩論 黒田喜夫

ボルカ:パップリポンから来た少女

●キュレーション推薦案

祝儀:氷の女王

るるりら:△

エイクピア:カイコ

桐ヶ谷忍:「花の死体」

ユーカラ:巡礼

徐々にでいいから:根っこから

湯煙:ある猫

湯煙:ニュー詩ンングル『長渕剛』

5or6:結婚

り:あなたを待つよ、シャンゼリゼ

みいとかろ:被写体

紅茶猫:無題

あきら:情けない人

完備:coarser

ふじみやこ:悲痛

YUU_PSYCHEDELIC:向日葵の詩

+ + +

天才詩人:わたしも大賞にはなかたつさんを推したいですね。

まりも:なかたつさんの「縁」は、日常の中で心になにかが触れて通りすぎた時間を、自己解説したり自己分析したりせずに、そのまま、断章のまま連ねていって作品に仕上げた、という印象を持ちました。

私は、大賞には 祝儀さんの 卒塔婆 を推したいのですが・・・

まりも:卒塔婆 は、非現実の出来事が扱われていますが、それが作品の中で、体感を伴うようなリアリティーで実現されている。作品のロジックも一貫している。作為的に、フィクションの世界を実体化させて、しかもその中での語り手の体験を、リアルな体験として提出している。

なかたつさんは、現実世界の側にいて、その隙間から見えたもの、現実世界の背後で動きながら、作者に訴えてくるものの気配に耳をすませて、そのまま(全体の論理的な流れに作為的な整合感を持たせようとしたり、物語として作り上げようとしたりせずに)提示しようとしている。それゆえに、多義的な解釈が生まれてくる。作者も、確とは説明しがたいことでしょう。

祝儀さんは、地縁や血縁といった、これもまた、現実世界からは、はっきりと見えないものを、漠然と感じとるところから出発していますが、その体感を、ひとつの物語世界に強力に実現させようとしている。虚構現実を作り上げていく手際と、その基になる感受性の鋭さを評価したい。

なかたつさんの作品も、今述べたような理由で、秀作だと思っていますし、多様な作者を紹介していきたい、というびーれびの方向性を尊重するなら、一度、大賞となっている祝儀さんではなく、なかたつさんを推す、ということになりますか・・・。

天才詩人:卒塔婆も秀でた作品ですが、なかたつさんを抑えるまでの強さはないと思います。議論わかれるところでしょうが、大賞は一人年一回までにしてもいいかもしれません。

まりも:なかたつさんの「縁」は、こちら側に侵入してくる向こう側、というのか・・・垣間見えたものを、そのまま提示している。

創作主体の意思や理念で、ひとつのロジックの通った世界に作り上げる、という手を加えていない。

それゆえに私には未完成に見えるわけですが、逆に、手を加えないが故に保存される、そのときに作者が感じた「真実」が、見いだされるかもしれない。それも、読者の立場や、経験値や、体験の差異によって、それぞれ異なったものとして現れる。

天才詩人:掲示板のレス欄でやりとりした印象だとなかたつさんの「縁」は、作者本人も気がついていない複雑さがあると思いますね。この作品についてはレス欄でひととおり言いたいことは言ったので繰り返しませんが、ずるぷかるくんの立ち位置というのはすごく面白い。

たしかに未編集の原稿というか、ナマの書物という雰囲気はありますよね。

しかし作品としてまとまっていないかと言えばそういうわけでもなく、作者の主観性の内部での戯れという点では一貫している。テーマ性はまとまりがないが、人間関係をスムーズにこなせない自分がいて、そこにいろんな考えが現れては去り。

まりも :こちら側の「私」が定点観測している、オムニバス的な印象はありますね。がっちりロジックを構築して、ひとつの物語として整合性のあるものを作ろう、という、作為から離れていこうという意志を感じますし・・・かといって、見つめる自分を手放すこともしない。 花緒さんも賛成なら、なかたつ作品の大賞、異論ありません。

花緒:大賞作の議論は最後でもいいような気がします。わたしはよほどのことがない限り、1人2回大賞は違うかなとは思っていて、今月、よほどのこと、は起こっていない気がします。

わたしは、なかたつ作品を推しますが、ダグマなども大賞候補かなとか思ったりはします。ただし、シリーズになっている作品ですし、詩文学というよりは散文作品なので、大賞とまで言っていいのか、という疑問も残っていますが。

天才詩人:優良作品の方から行きましょう。紅茶猫さん、「心中」ですが、まりもさんはどのあたりを評価されたのでしょうか。

濃紺の改札を通り
地下鉄に乗り込むと
ワカメが車両狭しと
生い茂っていた

利用者の立場に
全く立っていない
運営ぶりである

吊り革のように
ぶら下がる
酸素ボンベを
口に当てると
浮き上がらないように両手で
しっかりとパイプを握った

紅茶猫「心中に予告、心中に遅刻 」中~後半数連

このくだり、シュルレアリスト絵画っぽい運びですが、既視感がいなめず、全体を通してなんだか「つくりもの」っぽい感じがします。ドリーミーな感じを出そうとしているんだけど、構成している手つきが見え隠れしてしまうというのかなあ。これは花緒さんも推してるんですね。

まりも:紅茶猫さん、「つくりもの」風の、戯画的というのか・・・漫画や絵本の挿し絵風の映像が立ち上がるわけですが・・・濃紺、を抜けていく時点で、暗喩としての深層に踏み込んでいる。海にたとえられる、無意識層への下降。作者が、恐らくは意識しないままに行われている下降だと思います。

作者は、面白い映像や物語を作ろうという作為の方に意識を注いでいて、知らぬ間に無意識層に踏み込んでいるのではないかと思います。朔太郎の猫町のような、周囲が別種の生き物に変容してしまうような感覚。酸素ボンベがぶら下がる・・・エアポケット等に落ち込んだ、飛行機の機内のような、死を背後に控えた危機感のようなものが、映像として現れている気もします。

花緒:紅茶猫さんですが、ライトに読めるのに、全てデタラメにジャンクに描いてみせる筆致がわたしは評価ポイントでした。ビーレビらしいのではないですか。ライトっぽいけどひねりが効いている作品というのは。

まりも:デタラメにジャンクに、という、花緒さんのまとめ方、新鮮というべきか、なんというべきか(笑)

あり得ない話が、違和感なく「あり得る」世界として成立している。それも、実に軽い筆致で、力みなく・・・というところが、確かに魅力だと思います。

まりも:死にたい、という人に深刻に対峙すればするほど、自らも深みに引き込まれていく。気持ちは死を願いながら、実際には生を願っている、でも、生に踏み込んでいく、回帰していくには、現状が好転していればいいのでしょうけれど、それは、どれ程願っても、既に自分の力では成し得ない、あるいは、現状を好転させていくエネルギーが、既に残されていない。

そんな状況のなかで、しのぐようにやり過ごすように、ファンタジーの世界に逃避し、深層に下降してまた浮上していく。そんな心模様を、絵本的な柔らかい画像のイメージや、あまり強度を感じさせない、穏やかな語りで描き出しているように思います。

まりも:完備作品なんですが、飛躍が大きすぎて、うまく読めませんでした。天才詩人さんの、推薦理由を聞きたいです。

天才詩人:まず、この導入。手紙という「容器」の使い方が秀でている。手紙を開けると、そのなかの風景が動いているんですよね。この発想はすごい。手紙にはふつう文字が書いてあるだけですが、この作品ではムービーが立ち上がってくる。この一連目は買いだと思います。

かれからの手紙のなか
砂埃のむこうを
夥しい自動車が過ぎて行った

完備「coarser 」一連

紅茶猫さんのどこか受け売りとも取れるシュルレアリスムより、こちらのほうが作者の本来のセンスというか実力を反映している。innate(日本語で言うと、ある個人にほんらい備わったものくらいの意味)だと思うんです。

何番目に僕がいたでしょうか
と、かれが問う

完備「coarser 」二連冒頭

この部分はいまひとつですが、

きみは、ローソンが
固有名詞だと言い張った
この町の大体はローソンの窓に映る
とも、言った

完備「coarser 」四連より一行以下引用

このフレーズ。ひとつの町、現代日本の平均的な町のことは、ローソンにいけばたいていすべてわかる。コンビニに行けばすべてわかるという、印象的なフレーズだと思います。 つまり、秋津とか青梅とか相模原という名前ではなく、ローソンなんだと。

固有性と無名性、うまくまとまらないけど、これはこの小品の軸となるテーマとして貫徹されていると思います。で、冒頭に自動車が来て、最後のこの締め方。なかなか見事だと思います。

かれからの手紙のなか
砂埃のむこうを過ぎて行く
夥しい自動車、それらが
本当に自動車か
わたしはときどき、判別できない

完備「coarser 」五連

導入に持ち出してきたものを最後で脱臼させているんですね。

まあ、この作品は、なかたつさんの「縁」を、文句なく優良=10、次点佳作のボーダーを6、とすれば、7.5くらいのポイントで推します。

花緒:天才詩人のおっしゃることもわかるような気はします。しかし、7.5とは微妙ですね。その点数刻みだと、優良のボーダーは8くらいではないでしょうか。 完備さんも、紅茶猫さんも優良のボーダーかなとは思いますね。

まりも:完備さんの作品は、日常世界に身を置きながら、その隙間から見えてくるアナザーディメンションとしての「リアル」(作者個人が感じている詩的真実を持った空間)の断片を見つめている、感じですね。ローソンの窓に映る、という感覚、そこから、他者にとっては異界ながら、自分にだけ見える世界を文字に写し取っている。 立ち位置としては、なかたつさんと同じかもしれません。

まりも:たとえば、机や椅子が会話するのが「あたりまえ」の空想世界に入り込んで、そこで冒険したり遊んだりして、また、机や椅子が単なる物として存在する現実世界に戻ってくる。そんな、もうひとつの現実世界を作り上げて、想像力によって「そこ」と「ここ」を自在に行き来できる、それは人間の最たる特徴だと思っているのですが、それを徹底して達成している作品に、私は強く惹かれる傾向があるのかもしれない。紅茶猫作品は、その色彩が強い。

もちろん、こちら側に身を置いて、深く思ったり感じたりする、それを作品化していく方もいるし 、こちら側の「もの」や「こと」に、亀裂や隙間、あるいは、覗き穴のようなものを見つけて、そこから垣間見える、向こう側の世界を描く方もいる。

まりも : 完備さんの作品は、こちら側の世界に身を置いていることが、歯がゆいように感じられたのかもしれません。向こう側に思いきって飛び込んで、その世界の論理(たとえば、人が空を飛ぶのが当たり前の世界、とか)にしたがって、作品としてもっと一貫性のある世界を創作してほしい、と思ったわけですが・・・あえてこちら側の世界にとどまって、そこから見える世界を断片の集積のように提示していく。天才詩人さんの評を聴きながら、そんな作者の創作態度が見えてきたような気がしています。

天才詩人:いずれにしても大事なのは2つ以上の世界がそこにあり、そこに差異が生まれるということだと思います。このことで、作品世界に奥行きが出る。想像だけ現実だけではなく、両方を語ることが大事かなという、まあはんぶん当たり前のことですが。

花緒:夏生さんなんですけど、口笛を除く二作でいいのですかね。口笛がダントツで優れていると思うので、これだけ残して、あと、選外の方が作者に優しいかなとか思ったりします。

天才詩人:口笛良かったですね。推薦が多ければ優良でもいいかな、とは思います。激励的に。

まりも:夏生さんの口笛は、今回投稿された三作の中では一番よいと思いますが、うっかり三作投稿してしまうミスが何度も重なっているので・・・三作目を選考から外すべきでは、と思うのですが・・・今月の最初の投稿作が、先月投稿作なら、そちらを外すというやり方もありますね。

花緒:天才詩人リストだと、角田さん キリエルびと、ルルリラさん △、ユーカラさん巡礼、HAnedaさん フィラデルフィア、あたりは、当落線上な気がします。

ここら辺の議論の兼ね合いで、完備さん、紅茶猫さんの優良、決定してもいいのでは。

まりも:るるりら作品は、空間を作り出すこと(自分の体験した詩的空間を、他者に伝えうるものにすること)に熱心だけれど、現実世界からの離反が大きい、不安定さがありますね。抽象性が高いとも言える

まりも: ユーカラ作品は、分かりやすい言葉で語りながら、本当に言いたいこと、の回りを回遊している印象があります。比喩に逃避することで、近づける真意がある、というべきか・・・比喩によって、真意に近づくのではなく。具体的に、洗いざらい話してしまいたいのに、それを避けよう避けようとするがゆえの逃避。その回遊が、私にはまた、作品の味わいとして見えてくる部分でもあるのですが・・・

まりも: フィラデルフィアは、実際の事件に取材しながら、そこから空想を膨らませつつ、自らの思想を重ねていく作品でしたね。

まりも: キリエル人は、この世界観を語りたいのだ❗という強烈な意志を感じて圧倒されたけれども・・・その論理とか世界観の部分から見るなら、二次創作的な部分も含め、バナナさんや白島さんの論評的な作品と比して、優良でよいのか?という疑問が残ります。

花緒: キリエルびとは、存在自体が詩的なので、創作として、キリエルびと、という発想を超えるものがない以上、そこまで評価していいのか、という疑問を感じます。

まりも:選考の一助として、採点表を、大賞は4点、優良は3点、推薦は2点、次点は1点で、とりあえず作ってみました。

作者 作品名 天才詩人 花緒 まりも 計
なかたつ 縁 4 4 3 11
ジョヴァンニ 白を信じて 3 3 3 9
祝儀 卒塔婆 3 3 3 9
白島 ルドン 3 3 3 9
banana 黒田喜夫 3 3 3 9
ユーカラ 巡礼 3 2 3 8
るるりら △ 3 2 3 8
fiorina ダグマ 3 3 2 8
紅茶猫 心中 2 3 3 8
祝儀 氷の女王 3 2 2 7
ボルカ パップリポン 2 3 2 7
あきら なさけない人 2 2 3 7
徐々に 根っこから 2 2 3 7
白島 扉 2 3 2 7
桐ケ谷 花の死体 2 2 2 6
湯煙 ニュー詩ングル 2 2 2 6
紅茶猫 無題 2 2 2 6
エイクピア 東にあるイタリア 2 2 2 6
ハネダ フィラデルフィア 3 2 5
角田 キリエル人 3 2 5
完備 coarser 3 2 5
泥棒 変なプレイ 2 3 5
夏生 口笛 3 2 5
田中修子 夢夜 3 2 5
仲程 向日葵 2 3 5
ボルカ 考察と苺 2 3 5
桐ケ谷 ゆりかご 2 3 5
り あなたを待つよ 2 2 1 5
カズ ムー大陸 2 2 4
右肩 飛込み 2 2 4
湯煙 ある猫 2 2 4
北 タビラコとロゼット 2 2 4
静かな視界 コロニー 2 2 4
banana INTERNATIONAL 2 2 4
5or6 結婚 2 2 4
kikunae きれいな爪 2 2 4
およそ紺にて フラペチーノ 2 2 4
弓けい 水のおぼえ 2 1 3
霜田明 怠惰 2 1 3
yuu 通学路 2 2
5or6 ポエケット 2 2
夏生 メッセージ 2 2
仲程 ミシガンレリックス 2 2
水星 先端覆す 2 2
みいとかろ 被写体 2 2
ふじみやこ 悲痛 2 2
Yuu 向日葵の詩 2 2
宣井龍人 四番目の息 2 2
クヮン おわらない 2 2
二個優 ケーブルサラダ 2 2
なかたつ Cocco 2 2
田中修子 小さな夜の羽虫は 2 2
花緒:ありがとうございます。すごく面白いですね。6−7点くらいまでが優良ラインだと考えると、例えば、あきらさん、ボルカさんなども、優良作品になりうるものとして議論の俎上に上がりうるということでしょうか。点数表を使いながら議論してみるのも面白そうです。

天才詩人:まりもさん、ありがとうございます。

点数で出してみて各自納得の行かないところは、手動で交渉するのが良いかもしれません。 いろんな方法を試すことに賛成です。

まりも :上位得点者は、総員の意見が一致しているということで、そのまま優良で良いと思います。コメント欄にも意見は書き込んでいますし。

天才詩人:まずやってみてからで良いのですが、点数制にはデメリットもあるように考えています。それぞれ優良に入れた作品のなかでも、各自どれを強く推したいというのは必ずあるわけで、そういう選者のパッションみたいのはきちんと評価にいれていきたいなと思います。

まりも:議論で詰めていく感じで、いかがでしょう。それから、各作品の特質や長所をプレゼンして最終決定、というやり方。

天才詩人:ほかの誰ひとりも推さなかったとしても一人の人間を感動させる作品というのは価値があるはずですし、キュレーター各自のこだわりを最大限生かすのも重要なポイントではないかと。 点数制をとりあえずのベースにしてみることには反対しません。まあ、やってみましょう!

まりも:もちろん、点数はあくまでも目安です。

水星さん、推薦作に推したいです。 宣井さんとか、二個優さんの作品も。

天才詩人:水星さん「先端覆す」。作品としての流れがつくれてはいるな、とは思います。

ところでいまリストを見なおしたんですが52作ですね。半分以上に達しているので絞る必要がありそうですね。

天才詩人:便宜的に分けてみると・・・。

* * *

■大賞

なかたつ:縁

■優良

田中ジョヴァンニ:白を信じて

祝儀:卒塔婆

白島:ルドン

banana:黒田喜夫

ユーカラ:巡礼

るるりら:△

fiorina:ダグマ

紅茶猫:心中

祝儀:氷の女王

ボルカ:パップリポン

あきら:なさけない人

徐々に:根っこから

白島:扉

■推薦

桐ケ谷:花の死体

湯煙:ニュー詩ングル

紅茶猫:無題

エイクピア:カイコ~東にあるイタリア

ハネダ:フィラデルフィア

角田:キリエル人

完備:coarser

泥棒:変なプレイ

夏生:口笛

田中修子:夢夜

仲程:向日葵

ボルカ:考察と苺

桐ケ谷:ゆりかご

り:あなたを待つよ

カズ:ムー大陸

右肩:飛込み

湯煙:ある猫

北:タビラコとロゼット

静かな視界:コロニー

banana:INTERNATIONAL

5or6:結婚

kikunae:きれいな爪

およそ紺にて:フラペチーノ

弓巠:水のおぼえ

霜田明:怠惰

* * *

天才詩人:個人的に紅茶猫さんの「心中」が優良に残ることに若干のためらいがあります。「心中」を優良に残すのであれば、完備さんの作品を優良に格上げして、祝儀敷さんの「氷の女王」を(二作、優良となってしまうので)次点に格下げする。一案です。

プラス、今月気になったのが、弓巠さん。今回の作品、わりとよくまとまっていると思うんですが。

まりも:白島さんの扉も、ルドンの眼を優良に入れているので、推薦でよいかと思います。扉は視界のスピーディーな展開など魅力の大きい作品ですが、あえて過去の文体を用いているところが、少し気になりますね。

花緒:水星さん、選外で良いのですかね。私は、コメ欄にも書いた通り、ループ感が心地よい作品ではあり、推薦作なら違和感ないです。

天才詩人:水星作品は、まりもさんも推していましたね。

花緒:あと優良作の中では、あきらさん、ポイントは高いのですが、私は推薦相当作かなという気がしています。良作ですし、作者の実力やセンスも光りますが、小品の色彩が強いですし、この分量で、優良と言えるほどパンチが効いているかといえば、そうではないような印象があるのですがどうでしょうか。

まりも :読み直してみて、ハネダ:フィラデルフィア、角田:キリエル人、仲程:向日葵 を、優良にあげるかどうか、考え直したい気がします。

まりも:紅茶猫さんの「心中」と完備さんの「coarser」・・・やっぱり、心中は優良に残したい・・・いきなりファンタジー世界につれていってくれるところが、アニメの世界に入り込むみたいで、面白い。先の議論を踏まえて、完備さんの「coarser」を、優良にあげる方が妥当でしょうか。

祝儀さんの氷の女王は、二点目になるし、コメント欄にも書いた通り、映像化はうまくできているが、そこで止まってしまっている停滞感が強いので、推薦でよいかと。

天才詩人:なるほど。わたしも両方(心中、coarse)優良という案に賛成します。

まりも:天才詩人さんのプレゼンを突き合わせながら、完備作品を再読しました。行間の飛躍を大きく取る作者の奥行きを、多くの方に読み込んで頂きたい、ということで、優良に推します。

紅茶猫作品は、逆にベタに余白を塗り込みながら、別世界に読者を連れていく。ファンタジー小説に繋がる面白さを、優良に推したいです。

キリエル人は、寓意性の強い社会批評的作品という読み方も出来るところに、豊かさを感じますが、花緒さんはどう読まれるでしょう?

ハネダさんのフィラデルフィア、実際に起きた事件に取材していることを後から知りました。戦争、そこで魂を傷つけられてしまった者の内面に、想いを馳せる作品であると同時に、事実のみを写生していくようなスタイルで、読者に問いを投げ掛ける。そこに魅力を覚えます。叙述が丁寧すぎないか、途中で聞こえる声が、救いであるという受け止め方と、感傷に傾きすぎているという見方の双方が、私の中で葛藤しています。作品の終盤、謎を残して終わるところは、余韻があって良いと思いました。

水星さんのセンスに注目しているのと、クヮンさんの おわらない を、激励的に推薦に上げたい思いもありますね

花緒:キリエル人については、私はあんまし読めない作品でしたね。キリエル人をそもそも知らなかったというのもありますし、調べた時に、子供向けの作品であるウルトラマンでこんな難解なキャラ設定がなされているのか!という驚きを感じましたが、その驚きに作品が優ってはいないという印象を受けています。

まりも: キリエル人というキャラクターを借りてしまったが故に、そこに負けてしまっていないか、というところは・・・二次創作の場合など、難しいですね。

創作への熱意を評価したいという思いはありますね。

天才詩人:いま読み返していたのですが、ボルカさんのパップリポン、なかなかの良作ですね。なぜこれを次点にしていたのか、たぶん、最後のワンフレーズで引っかかったんだと思います。純粋ラーメンのケースと同じ。最後の締めが中途半端で決まっていない。

パップリポンは若草の揺れる
明るい静かな国なのだ と、いう話だ

蛾兆ボルカ「パップリポンから来た少女」最終二行

若草とか明るいとかが唐突なんですね。伏線がない。

あと、タイトルに「少女」が入っているのは、母親の話をしているのだから、飛躍だと思いますね。

まりも :パップリポン、というとらえがたいものを、とらえがたいまま出している・・・そこに、そうあってほしいという願望が重なって生まれたイメージでしょうか

天才詩人:作品全体を見渡すとパップリポンよりもむしろ、「黒い人」という語句の挿入ですね。パップリポンというポップなワードが入る前に、黒い人という言葉のインパクトが流れを決めている気がする

黒い服の人が 「死んでしまえ」と言うの
と、つらそうに言う
―――幻聴だよ
と、言うと
眉をひそめたまま、答えない

黒い人の言うとおり、わたしは悪人だから
黒い人に遠い国に連れていかれて
崖から突き落とされなければならないの
と、言う

蛾兆ボルカ「パップリポンから来た少女」三連~四連より四行引用

この導入ですね。黒い服の人が後ろから突き落とす。これはすごいインパクトだと思います。黒い服の人だけであれば、日本の昔話的なイマジネーションで忍者とかに連なっていくのだと思いますが、この黒い服の人はもっと深い次元での「悪」を具現化するような、忌まわしいものとして暗示されている気がする。

これが、パップリポンのところでポップな方向にターンする。

少し沈黙して、二人で笑った
―――変な国だねえ

蛾兆ボルカ「パップリポンから来た少女」六連より上から二行引用

まりも :モーツァルトの、ドンジョバンニの最後に、死刑執行人みたいに現れる存在、それに似ている。

天才詩人:変な国どころじゃないですね。導入のイメージは。ガチで怖いです。

まりも:原罪的な感覚に通じるものがあって、そこが妙にあか抜けているんですよね 。

西欧の洗礼を受けた宮沢賢治が、奇妙に明るい、西欧的な街並みを作り出していることを、思い出しつつ・・・「母」が夢想の中で訪れる国も、そんな西欧風の場所だったのではないか?イーハトーブとか、そんな不思議な名称をつけられた、どこにもない街、どこにもない国

天才詩人:ドン・ジョバンニ・・・なるほど。

宮沢賢治の垢抜けた感じというのは面白いですね。大正ロマンティシズムの残滓。わたしも幼少期に宮沢賢治はたくさん読まされたのでよく覚えていますね。イーハトーブとかカンパネルラとか。日本の農村が舞台なのに、異国情緒的な「外国」の方向にイマジネーションが飛んでいく。

まりも: 童話作家であった、というシチュエーションが、最初に与えられることによって、宮沢賢治のイメージも、否応なしに、借景として重なってきますよね

そこに、とりこまれてしまった、もしくは、取り込まれそうになっている「母」を、見つめる息子の視点が、全体を「願い」の方向に持っていっている

天才詩人:面白いですね。そう読んでいくと、最後の牧歌的な締めも納得がいくとも言えますね。

まりも :苺 と比較して、願いの強さが全体の甘さになっているような気もして、苺 の認識の方を優良に推したのですが・・・。

天才詩人:苺なんですが、星空と、人間の目の話。それを苺に落としこむ必然性があまり感じられなかった。一読した印象ですけど。

紅茶猫さんとはまた違った意味でですが、構成する手つきが見えてしまっている感覚。

まりも :苺におとしこむというより、じっと見つめているうちに、種が目に見えてきた、という、幻覚的な夢想が出発点でしょう。

あるいは、プラネタリウムから、その時のことが喚起された、のかもしれませんが、確かに、構成に凝っている、その辺りに不自然さを覚える・・・芸術性を高めるにはどうしたら?という、構成意欲のようなものを強く感じる、ということはあるでしょうね

天才詩人:パップリポンの方は、すでに書いたことですが、大正時代の理想化された「美しき」農村。異国と重ねられる農村とか。そのあたりは宮崎駿的なもの(となりのトトロとか)とも連続してくる。

まりも: そう、牧歌的な世界であってほしい、死刑を宣告されるようなところではなくて・・・という願の強さを、甘美さとして味わう、ということでもある。苺 の辛さを取るか、パップリポンの甘さを取るか。

天才詩人:しかし、まりもさん、このことを最初に言おうとしていて話がそれてしまったんですが、2017年を生きている人間にとって、黒い服を着た人たちがいる国に連れされれて崖から突き落とされるという。これはまったく別のもっと緊迫した問題、イスラム国だと思います。現実に欧州や北米から若者が、シリアに行ったりして、それがかなりの頻度で報道されている。このコンテクストで本作品の黒い服の人というのはセンセーショナルだと思うんですよね。

まりも :意識的にではなく、無意識的に、そうした現代性を心象に納めた作品ということですね

天才詩人:ご本人が意図したかどうかはわかりません。

まりも :意図的に、であれば、もっとあざとい描写になったでしょうね。全体を覆う牧歌的な、哀しみのような明るさのようなものにはつながらないでしょう

天才詩人:ですね。難点をあげつらいましたが、良作です。優良に推しましょう。

コメントするにはサインインまたは登録して下さい。